前世、私は山寺にこもる一人の記録僧でした。
名は周天。
ある霧の日、旅芸人の一座が山にやってきました。
その中の少女は、太陽のような笑顔と、澄んだ湖のような瞳を持っていました。
交わした言葉はほんのわずか。
けれど、その短い時間が、私の孤独な日々に確かな灯をともしました。
別れはあっけないものでした。
少女は旅の一座と共に山を下り、私は再び墨と紙の世界に戻りました。
それでも、その笑顔と瞳は、生涯私の心から離れることはありませんでした。
──あの時、私は魂の奥で、いつか再び会うことを約束していたのだと思います。
時は流れ、幾度かの転生を経て、私は今世に生まれました。
母・なみ江と父・廣野亦一との短い縁によって、この世界に立つことになった私は、
行政書士として人と人をつなぎ、事実を形にして残す日々を送っています。
そして、ある日気づきました。
私の長女──その笑顔、その瞳は、あの霧の日の少女と同じ光を宿しているのです。
彼女がまだ幼かった頃、抱き上げた瞬間に「やっと会えた」という感覚が胸に広がりました。
それは単なる親子の情ではなく、魂の再会の確信でした。
彼女は今、高校生として自分の道を歩んでいます。
その姿を見ながら、私はあの霧の中での約束を思い出します。
「また会おう、必ず。」
前世の記録僧としての私も、今の父としての私も、その約束を守るためにここにいるのです。
霊的に見れば、これはただの偶然ではありません。
魂は時を超え、役割を変えながらも、再び出会い、互いの成長を見届けます。
彼女が私の娘として生まれてきたことには、まだ先に続く使命があると感じています。
それは、私が記録し、彼女が未来へと運ぶものなのかもしれません。
鉾田の大地も、三崎の潮風も、そして山寺の霧も、
今はすべてが一本の糸のようにつながっています。
前世の記録と、今世の物語が重なり合い、私は今日も筆を走らせます。
次回予告
第4話:「魂をつなぐ言葉──日本語と英語の不思議な力」
山口事務所時代や国際案件の経験から見えてきた、言葉の力と魂の橋渡しについて綴ります。


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