第2話:母と父の出会い──魂の契約

魂の記録

母・なみ江は、茨城県鉾田の農家に生まれました。
6人兄弟の5番目として育ち、幼い頃から家族の間を取り持つ「橋渡し役」になることが自然な日常でした。
まだ十代の頃、母は故郷を離れ、三浦半島の先端、三崎の漁師町に住み込みで働き始めます。
潮の香り、港のざわめき、そして夜になると賭場へと変わる場所。
母はそんな環境の中で、世間の厳しさと、人の笑顔の裏に潜む本音を学びました。

その後、母は東京・練馬区のスナックで働くようになります。
カウンター越しの会話、氷の音、タバコの煙。
お客の心の奥を感じ取りながらも、必要以上のことは語らない──それが母の流儀でした。

そんなある日、一人の男性が店に現れます。
名前は廣野亦一。
当時、彼にはすでに家庭がありましたが、不思議な縁で二人は惹かれ合います。
二人の時間は長く続いたわけではありません。
しかし、その短い出会いの中で、ひとつの使命が果たされます──
それが、私の誕生です。

霊的な視点から見れば、これは偶然ではありません。
生まれる前から交わされていた「魂の契約」。
二人は出会い、短く交わり、そして別れることで、
新たな魂──私──をこの世に送り出す役割を果たしたのです。

その後、父・亦一は家庭を離れ、いくつかのスナックを経営しましたが、事業は上手くいきませんでした。
母はシングルマザーとして私を育て、多くを語らず、愛情を表に出すことも少なかった。
けれど、その沈黙の奥には「あなたは生まれるべくして生まれた」という確信があったと、今は感じます。

前世で霧の中の山寺にいた私は、一人の少女と出会い、再会を約束しました。
そして今世、母と父が結んだ一瞬の縁によって、その約束は果たされ、
私は再びこの世に立っています。

この出会いは、破綻でも過ちでもなく、魂の計画の一部
争いを超え、必要な瞬間だけ交わる──
それが、二人の契約だったのです。


次回予告

第3話:「再会する魂──霧の中の少女と長女の笑顔」
前世で出会った少女が、今世で私の長女として現れた、不思議で温かい物語をお届けします。

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